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【コラム】理科大数学科のススメ

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今では趣味で数学をしているけど、学生時代は苦手科目で通知表で1をもらったこともあった。

高校で文系か理系に進む判断を迫られたとき、当時の担任から 「お前は文系じゃなきゃダメだ」 と言われ、天邪鬼な精神から理系を選択したことを今でも覚えている。案の定、学校の授業にはついていけなくて、一旦は進学を諦めて夜の街でほんのり働いた。

絵に描いたようなダメ人間の生活を送っていて、あるときパチスロで大金を失った。とてもショックで、でもそれがいいきっかけで生活を見直すきっかけになった。

マトモな人間になろうと考えて思い立った手段は、大学に行くことだった。賢い大学に行って、いい会社で働く。そう決心した僕はとある予備校の門を叩いた。

志望校を問われて「東大」と答えた。偏差値が40程度しかなかったけど、僕の野望は東大から始まると信じていた。

今思うと、よくこんな成績だった僕を東大コースに入れてくれたなと思うが、田舎の予備校は寛大で、浅はかだった。東大受験生向けの授業についていけるわけもなく、内容がさっぱりわからなかった。

近所のモスバーガーでよく勉強をしていたが、それは店員が可愛かったからにほかならない。その店員はときどき僕に水を持ってきてくれて、そのたび僕はそっとテキストを閉じて東大の文字が見えるようにしていた。数あるテキストの中でも、「東大数学」が一番カッコよく思えたから、よく東大数学のテキストを開いていた。

予備校の先生が板書した内容はちゃんとノートを取っていたから、公式とか定義とか知らないものはテーブルの下でこっそり教科書開いたりして、問題は解けなくてもせめて模範解答は理解しようと繰り返し読んでいた。

解答の流れが理解できるようになってくると、先生はなんでこんな解答が思いつくんだろうと考え始めた。授業では解答の説明はしてくれるけれど、なぜそんなことをやろうとしたのかはわからなかった。

そこで、僕なりに解法の必然性を探し始めた。そんなに毎度難しい問題に対して先生が適した解答を閃いているハズがない。きっと考え方があるハズだと思った。数学の問題にパターンがあるなんてことも知らなかった。膨大な問題が世の中にはあって、それぞれに毎回解法を考えていると思っていた。

教科書は手元にある。ここに書いてあることを使って、問題を解く。こんなシンプルな枠組みの中で、どうやって毎度解法を閃くのか。考えた結果たどり着いたのは、問題文だった。教科書の中のどれを使うのかを一生懸命探している中で、必要なのは教科書と問題を結ぶために、問題文をしっかり読むことだと考えた。

しっかり読むとは繰り返し読むことだと最初は思ったけど、そんなマヌケな行為ではなく明確な手法があるはずだと思い始めた。英語の授業や国語の授業で、長文の読み方をわからないなりに聞いていた。数学の問題文に対しても同じような態度を取れば、その手法のヒントに気付けるのではないか、と。

東大の問題を考えるから少しハードルが高すぎるんだろうと思って、センターの問題から自分で考えて解いていた。わからないと思ったとき、何がわからないのかを自問し、答えが出ないときには解答をみて、その論理展開を確認していた。また、なんとなく解けてしまったときにも、自分が解けたことの理由を考えた。次同じことを問われたときに、僕は同じ態度を取れるだろうか。思考回路をときに図に書いたりして確認していた。

結論はそう甘くはなくてすぐに問題が解けるようになったわけではなかったけど、徐々に文章の繋がりや論理構成を考えることで問題と解答を紡ぐことができるようになってきたとき、光明が射したようだった。解けない問題があって先生の模範解答をみたとき、文と論理構成を考えて読んでいくと、解法の動機がわかった気がして、学習効率が上がっていることも実感していた。

そんなこんなで数学の勉強にのめり込んで、夏を過ぎる頃には東大の問題も解けるようになっていたけど、数学しかやっていなかった。いい大学に行こう、東大に入ろうと思っていた僕には、ヤバい状況だった。

そこから英語の勉強も頑張ってはじめた。僕の中で勉強法がとても数学と似ていて、これはこれで楽しかった。けれどそのまま冬が来て、結局ちゃんと勉強したのは数学と英語だけで、国立は厳しいなと思い始めていた。

そこでどこを受験しようかなと思ったときに、どこの大学とかじゃなくて、数学科に行きたいなと思っていた。他の学問に全く魅力を感じていなくて、数学の世界をもっと知りたいと思うようになっていた。

数学科のある大学は沢山あったけど、大抵受験科目が数学・英語に加え、理科(物理・化学)があった。理科は全く勉強していなかったのでその分を数学と英語で稼ぐしかないかなと考えていたとき、そんなことを相談していた予備校の事務の人から上智理科大が数学と英語だけで受験できることを教えてもらった。

理科大上智を受けるしかない。そう思って、願書の準備とかをしていると、その僕に許された二つの大学が受験日が同じであることを知った。

とても悩んでいろんな人に相談したが、数学科に行きたいなら理科大という声が多かった。調べるうちによく読んでいた本の著者である秋山仁先生も理科大と聞いて、こっちしかないと思った。

合格最低点を調べると、数学・英語・数学科用数学の300点満点で半分程度が例年の様子だった。英語を解かなくても合格点を狙えるのかとビックリしたのを覚えている。

理科大を受けることを決めた僕は、願書を出して、受験して、ちゃんと受かった。

数学が楽しくて、4年勉強して、それじゃ物足りなくて院にまで進んだ。理科大にはいい思い出しかない。2年勉強したところでお金に目がくらんで修士で卒業して外資系金融機関に就職することになった。そして数学を趣味に、日々サラリーマンとして生きている。

勉強ができなかった僕が、数学だけであの頃では想像もつかなかった大学に進めて、幸せな今がある。それまでの人生の選択で異なるものを選んでいたらどうだったかはわからないが、そして世の中が学歴主義だというつもりも毛頭ないが、数学が好きな青年が数学だけを勉強して、理科大が受け入れてくれたところが一つの人生の分岐点だったと思っている。

学歴至上主義はとっくに崩壊しているが、それでも興味があれば数学を学ぶ価値はあるし、使いどころを探求することを忘れなければ社会に出て大きな武器になる。

たった1人が経験した事象から一般化できるはずもないが、あの頃の僕のような人がこの記事を読んでいたら、ぜひ理科大数学科を勧めたい。

理科大数学科のススメとか言って、理科大数学科に依存するところ少ないじゃないかとお叱りを受けそうだが、そこまで含めて理科大数学科愛とご理解いただきたい。

東京理科大学(理学部−B方式) (2018年版大学入試シリーズ)

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